この花

いろいろエッセイ
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 花を見ている。
 今、目の前に花がある。
 明日はどうなっているのだろう?
 明後日は? それから先は?
 明日のことは分からない。
 明日にはもうこの花は刈り取られているのかもしれない。
 たしかなこと。
 それは今、わたしの目の前にこの花があって、わたしとこの花が同じ時と場所にいて、それらを共有しているということ。
 いや、わたしもこの花も本当はいなくて幻なのかも。
 たとえ幻でもあるようには見えるし、手でふれようと思えばあるように感じる。
 それだけで十分なのかもしれない。
 あるだけで。
 いるだけで。
 今、目の前にある花がすごい薬草でわたしの病気を治してくれるとか、売ると高値になるとか、別にそうでなくても、たしかにこの花は今、わたしの目の前にあって咲いている。
 それだけで、それだけでいい。
 それで十分。十分すぎる。
 この花のおかげでこうして気付きが与えられているから、役に立ってはいるのだけれど、別に役に立たなくたって上等だし、それで十分。
 いる。ある。
 そのことのすごさに気付かせてくれたこの花に目を留めた人はわたしくらいだと思う。
 この花のようにわたしは咲いていたい。
 そして、通りすがりの人が一瞬目をやって何か思ってくれるなら、たとえそれがたった一人であっても上出来ではないかな。
 蛾が飛んできてこの花の蜜を吸っている。
 それでいいのだろう。おそらく。

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