ポン、ポン、ポン、ポン。テレビの画面の向こうでは肌のしみとくすみに悩んでいるという女性がファンデーションをつけている。その顔はみるみるうちにきれいになっていく。その気にしていると言うしみとくすみは隠れていき、問題解決。
いつまでも美しくありたい。特に女性はそのように強く願うようで、そのお化粧している様子をテレビの前で見ていて、大変だなと人事のようにわたしは思う。
まるで美しくなければその人の価値が減ったりなくなってしまうかのような、そんな焦りと切迫感さえ、その通販番組からは伝わってくるのだ。
それはともかくとして、なぜわたしたちは美しい人にひかれるのだろうか。どうして引き付けられるのだろうか。わたしが思うに、それには生殖が関係していると思うのだ。生殖、つまり子孫を残すこと。アイドルが男女とも大抵若者であることは、彼らが生殖能力があることを意味している。つまり、美しい人というのは優秀な子孫を残してくれそうな人だということだ。
こう考えるといろいろなことがスッキリする。そして腑に落ちる。わたしを含めた障害者がなぜあまりモテないかと言えば、本能的にこの人との間にはいい子孫が望めないと相手が嗅ぎ取っているのだ。
だから、反対に高学歴者やスポーツ選手はモテるんだ。この人となら、頭のいい子どもが生まれる。運動のできる強い子どもが生まれる。と言いつつも、中にはお金のことしか考えない人もいるけれど、今言っているのは美しい人になぜひかれるのか、ということだ。少し脱線。
うむ。美しいというのは優れていることだと言い換えることができそうだな。
では、閉経した年齢の女性であっても美しい人にひかれるのはなぜだろう。わたしが思うには、それくらいの年齢の男女ともなれば、内面的な美しさが重視されてくるような気がする。その内面的な美しさがにじみ出ていて、外面的な美しさにもつながっている。だから、それくらいの年齢の男女関係というのは、まだわたしは推測することしかできないけれども、性的な欲求からかなり解放された本当の大人の関係ではないかと思うのだ。
アーユルヴェーダが考える美しい人というのは心も体も美しい人のことらしい。たしかに心と体はつながっていて、本当に美しい人というのは外面だけではなくて、内面も平安に包まれ満たされているように思う。本当の美人は心も美しい。いや、心も美しくなければ本当の美人ではないんじゃないの? あるいはもっと言うなら、どんなルックスだとしても心が美しければそれで十分だとも言える。
わたしが7時くらいに朝散歩をしていて、すれ違うおばさま達は心が美しい人がほとんどだ。わたしとすれ違う時に、それは明るい表情でさわやかな挨拶をしてくれるんだ。もちろんシニアな方々だから、若い人と比べれば容色は明らかに落ちている。でも、それを補って余りあるくらい人として素晴らしいんだ。もちろん、ただ挨拶を交わしただけだから、その人の本当の人柄までは分からないんじゃないかと疑問をあなたは呈されるかもしれない。でも、あの挨拶を返されてみたら、そういった朗らかな年上の女性と人生を共に歩むのも楽しいんじゃないかなって気がしてくるのだ。わたしは母親が66歳なんだけど、70歳くらいまでだったら十分対象年齢ですよ。素敵な方だったらそれくらいでもOKです。ただ、80代だとちょっと一緒にいられる時間が短いからだいたい70歳くらいまでの人がいいな。もちろん60、70代の女性は閉経しているから自分の子どもを産んでもらうことはできない。でも、それならそれでいいし、まぁ、なるようになればいい。姑よりも嫁の方が年上というのもなかなか味があって面白いかもしれないな。
わたしが生涯を共に歩みたいと思った相手なら、あばたもえくぼだろうから、しみとかしわとかくすみとか、そういった一般的にはネガティブなイメージを持たれがちなものに対しても愛おしめるんじゃないかって気がするんだ。ちょっとどうかしてると思う人もいるかもしれないけれど、そういったしみとかくすみに何度もわたしは接吻するかもしれないな。しわについてもあなたの生きてきた証だから、むしろ大切にしてほしいと言うかもしれない。そうなったら、ファンデーションなんかの化粧品も必要なくなるね。
アンチエイジングをして長生きできるのであればやるのもいいと思う。でも、美容については、大切な人が特にわたしはそういったものを求めないよ、と言うのであれば別にこだわらなくてもいいと思うのだ。それよりも、自分との毎日の生活を幸せだと感じてくれていることの方が重要だけどな、っていう意見だな。わたしはね。どんなにその人が外見的に美しくても、共同生活が不幸そのものだったら、そんな美しさ要らないよ。ま、そうなったら飾っておくためのお人形さん、あるいは自分のアクセサリーみたいな感じでしかなくなってしまうね。
しみとくすみに喜んで接吻できる男性が増えたら化粧品は売れなくなるだろうけれど、とても幸福度の高い夫婦が増えるだろうなって思う。で、そんな夫に妻もはげてきた頭をよしよしする。そして、お互いが年齢を重ねることを祝福し合えたら最高だよ。
しみとくすみに接吻。うむ、いいコピーだ。自画自賛かな?
1983年生まれのエッセイスト。
【属性一覧】男/統合失調症/精神障害者/自称デジタル精神障害/吃音/無職/職歴なし/独身/離婚歴なし/高卒/元優等生/元落ちこぼれ/灰色の高校,大学時代/大学中退/クリスチャン/ヨギー/元ヴィーガン/自称HSP/英検3級/自殺未遂歴あり/両親が離婚/自称AC/ヨガ男子/料理男子/元ポルノ依存症/
いろいろありました。でも、今、生きてます。まずはそのことを良しとして、さらなるステップアップを、と目指していろいろやっていたら、上も下もすごいもすごくないもないらしいってことが分かってきて、どうしたもんかねえ。困りましたねえ、てな感じです。もしかして悟りから一番遠いように見える我が家の猫のルルさんが実は悟っていたのでは、というのが真実なのかもです。
わたしは人知れず咲く名もない一輪の花です。その花とあなたは出会い、今、こうして眺めてくださっています。それだけで、それだけでいいです。たとえ今日が最初で最後になっても。