吃音(きつおん)持ちのわたしだけど結構物事うまくやれてるじゃん

吃音エッセイ
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 わたしには吃音(きつおん)という言語障害がある。吃音とは簡単に説明すると、「ぼ、ぼ、ぼ、僕は」みたいに最初の音を繰り返してしまう。あるいは最初の音がなかなか出せなくて数秒間の沈黙が生じてしまうといったところだろうか。
 吃音は器質的な面では異常がないので(のどなどには異常がない)、声をのどの手術などをして出せないとか、そういった人たちと比べると大したことがないと思われるかもしれない。
「それくらい我慢しろよ。」
「気にしすぎだよ。」
「世の中にはもっと大変な人がいるよね。」
こう軽くみられがちな吃音なのである。地味でわかりにくくて劇的な症状があるわけでもない。地味。とにかく地味。
 けれど、本人はすごく気にしていることが多い。周囲にはさほど大きな問題のようには見えなくても、死ぬほど吃音で悩んでいる場合もある。(逆に重度の吃音でも悩んでいない人もいる。)
 わたしの吃音が軽度なのか重度なのかと言えば、割合軽めなのかもしれない。でも、わたしは吃音で20代のころ本当に苦悩した。わたしにとって20代の某福祉大学時代は吃音が極度に悪化した忌まわしい時期である。筆談した方が早いんじゃないかというくらい声が出なくてそれはそれは不自由していた。おそらく精神状態と吃音は連動するのだろう。荒廃した希薄な人間関係のもと友人も一人もおらず、孤独であった。そして、吃音は悪化してさらに人と関わりたくなくなる。まさに悪循環だったと思う。
 そんなネガティブオーラ全開だったわたしが教会へ行きキリストに出会ってからはすこぶる表情も明るくなり、人間関係も限定されてはいるものの、それなりに作ることができ幸せの階段を上っている。教会の皆さん、ありがとう。そして、イエスさま、ありがとう。感謝は尽きない。
 さて、昨日、祖父があれから施設に入所して一ヶ月経った。そして、その報告会が施設にて行われた。母が体調が悪くて行けなかったので、わたしがその代理である。となると責任重大。しっかりと務めを果たさなければならないという重圧のもと、結果から先に言うと何も問題なく支障なくやれたのだ。良かった。祖父に関わってくれているおもなスタッフ4人と祖母、わたしで話をしたのである。初対面の人も2人くらいいて、うまく話せるだろうかと心配だったが、何も滞りもなくこなすことができた。
 わたしってちゃんとできてるじゃん。大役しっかりと果たしたじゃん。そういうわけで達成感たっぷりな一日だった。
 もちろんわたしは長時間話しているとどうしても吃音が出てしまう。でも、30代になってから言葉についての考え方が変わったのだ。吃音があろうとなかろうと、必要なことはしっかりと相手に伝えなければならない。むしろ、その懸命に伝えようとする姿勢が誠意があるということではないのか。吃音だから話す場面を回避するのではなく、むしろ自分から切り開いていく。それで、どもったならどもったでいいじゃないか。別にどもることは犯罪でも何でもない。大いにどもって結構。
 施設のスタッフたちもいろいろな人がいることくらいはわかってくれているようだったので、あえてわたし自身から吃音だとカミングアウトすることもしなかった。「この人ちょっと話すのがあまり得意ではないんだろうな」くらいには思われたかもしれない。一生懸命、祖父のことについて話した。質問したり答えたりした。そんなこんなで、終始和やかな雰囲気の中、報告会は終了したのだった。
 それでもわたしには吃音のため、できないこととか難しいことがある。それは初めて話す人やあまり関わりのない人と電話をすることである。だから、コールセンターとかの仕事は絶対に無理だし、そこまで電話専門でなくても、普通に電話を受けたりかけたりするだけでも上記のような人たちとの場合、わたしには難しいのである。
 それからタクシーに一人で乗ることが出来ない。行き先言えばいいだけでしょ、と思うかもしれない。たしかに行き先言うのならまだできるが、帰りの自宅まで口頭で指示するのが難しいのだ。どもっている間に道を通り過ぎたり、しどろもどろで運転手さんに迷惑をかけてしまわないか、と不安要素が盛りだくさんなのである。また、毎回運転手が違うのも大きい。初対面の相手に話すのが特に苦手だからだ。だから、基本わたしは移動は電車かバスなのである。
 自分でできることを開拓していきながら、できないことや苦手なことは誰かに助けてもらう。そんな感じでやっていければと思う。
 吃音とつきあいながらやっている。そんなわたしである。吃音持ちだけれど案外物事うまくやれていることが多い。神に感謝。


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