星のアシュタンガヨガ日記 第1回「頭ではなくて体で覚えろ」

星のアシュタンガヨガ日記
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 アシュタンガヨガの教室に通い始めてから3回目といったところで、3回目にして指導に定評のある先生に教えてもらうことができた。
 その先生、すごく細くてそう、たとえるならマラソンの選手みたいなんだ。細身の身体で無駄な肉が何もなくて、スラリを超えて颯爽としているって言ったらいいのだろうか。教室のサイトではその先生の趣味がバイクとサーフィンということで、とにかくアクティブな趣味を持っている。
 で、その先生に教えてもらったわけなんだけれど、結構指摘されたり、ポーズを直してもらった。今までわたしはDVDの自己流でやってきたわけだから、これはありがたい。
 が、アシュタンガヨガでは順番にポーズを覚えていって、その度に先生から新しいポーズを教わるのだけれど、わたしにとっての難関がこれだった。
 先生が手本を見せてくれる。それをいわば弟子であるわたしは見ている。と、そこまではいい。けれど、そこからが難しい。そのポーズを同じようにわたしがやってみせなければならないのだ。っていうか、今までさして運動経験のないわたしにとって動きを覚えるというのがどれだけ難しいことなのか、あまり運動経験のない人なら分かってもらえるだろう。これをやって、あれをやって。で、さらにこれやって、あれやって。さぁ、やってみてください。全く私は先生のポーズを再現できない。というよりも、もはややる段になって頭の中は真っ白になって、星さんフリーズ!! こ、ここは笑うところじゃないよ。もう固まっちゃって困ったという感情すら浮かんでこない。ただ、動きようがなくて固まってフリーズ。
 今までDVDを見ながらだったり、あるいは公民館のヨガ教室だったりで、先生の手本を見ながら真似をする、というのはできる。でも、一連の動きのお手本を見て、それを再現するなんていうのはてんでできないんだ。小さい頃からちびっこ体操教室とか運動教室なんかに通っていたような人なら別に問題なく、ほいさ、ほいさでできてしまうだろう。が、いわば40歳からのちびっこ運動教室みたいなものなので、何せ経験がほぼないし、あっても浅い。
 そんなわけで固まるたびに見かねた先生がフォローに回る、という感じだった。先生が手本を見せる。さぁ、やって。フリーズ。また、先生が教えてくれる。さぁ、やって。またまたフリーズ。そんな感じの営みを何回かしていたわけで、わたしは先生に言ったんだ。「こんなにいっぺんに覚えられません」。まだその先生に教わり始めたばかりの初日からの泣き言。
 と、先生は間髪入れずにこんなことを言う。「頭ではなくて体で覚えるんです」。わたしに衝撃が走る。凄まじいカルチャーショックと言ったらいいのだろうか。と同時に「そんなの無理だ~」とまたしても泣き言が口から出そうになる。わたしのなけなしのプライドは砂のお城が崩れ去るように崩壊した。
 先生の体で覚えろ、との指導を受け、わたしはやらざるを得なくなった。「後で本とかDVDを見ながらゆっくりやります」なんてとてもではないけれど言えるような空気ではなくて、今、そう今この場でその教えてもらったヨガのポーズをやらなければならないのだ。先生はこちらをじっと見つめている。「やるしかない」と開き直ったわたしは何度もフリーズしながらも、そして、しどろもどろになりながらもその先生が伝授してくれたポーズをできるようになろうと懸命にあがいた。先生の動きを思いだそうとしては思い出せず、また思いだそうとしては頭の中が真っ白になりフリーズする。その度に先生はわたしにそのポーズの手本を見せてくれる。まさにこの時は同じ空間に何人か他の生徒さんたちはいたものの、マンツーマン指導。
 何もわたしがやろうとしているポーズが複雑な動きだったり、体の構造上難しいとか、そういったわけではない。ただ、連続した動きがなかなか覚えられなくて苦戦していたんだ。ダンスの経験がある人なんかだったら、こんなのは朝飯前だろう。が、これができなかった。
 けれど、先生の言うようにとにかく実地で体を動かしてその動きをできるようになろうとしていると、段々と運動経験のないわたしもできるようになってきた。頭の中では全然整理できていない。これがこうなって、次にこうで、みたいなものを言葉では固めることはできない。言葉ではない何か。要するに体が覚え始めた新しいヨガのポーズ。先生の言ってくれたことはすごく的確で、何にも理屈は押さえていないのに、それでもできるようになっている。何とか筋がどうして、ああしてみたいなことは全く把握していなくても、現にできればいいじゃないか。そんな理屈ではなくて実践を重視する姿勢。昨日帰ってきてから読んだアシュタンガヨガの本にはそんなことが書いてあった。1%の理論と99%の実践ということらしい。
 思えばわたしは言うまでもなく頭でっかちな人間なのだと思う。何をやるにしても必ず理論というか理屈を押さえようとする。そして、理解してから、情報を集めてから動いたり、覚えようとしたり、技を修得しようとする。でも、それはアシュタンガヨガの伝統にはそぐわないらしい。アシュタンガヨガの考えでは、1にも2にも実践なのだ。実践に始まり実践で終わる。理論がゼロでもいいとまでは言わないものの、それでもほぼすべてが実践。実践しろ。そうすれば必ず道は開ける。そんな考え方なのだと思う。
 そんなこの前の出来事を思い出しながら、今、わたしは自転車に乗るための練習をしていた小学生の頃のことをふと思い浮かべる。補助輪なしの自転車に乗る。そのためには何度も何度も、転んでは立ち上がってまた乗り、また転んでは立ち上がって乗りを、できるようになるまで繰り返す。練習をする。それもひたすらできるようになるまで。わたしが自転車に乗れるようになったのは、何も自転車の構造だとか仕組みだとか、わたし自身の体のつくりなんかを熟知したからではない。そういった知識などではなく、ただ練習をした。つまり、実践を重ねたからこそできるようになったのだ。理屈ではない。自転車の知識を問うペーパーテストか何かがあってそれで100点を取れても、だから自転車に乗れるようになる、なんていうことはない。自転車についての知識を得るのではなくて、繰り返し練習をする必要があるし、しなければならない。
 ヨガも自転車と同じで、どんなに解剖学とか人体の仕組みなんかに習熟しても、だからポーズができるようになるかと言えばそんなことはない。とは言えども、まぁ、何も知らないよりは知っていた方がいいだろう。でも、基本的なことさえ押さえていればあとは練習あるのみなんじゃないか。アシュタンガヨガではあんまり熱心に解剖学とかには向かわないとのこと。
 アシュタンガヨガの創始者のパタビジョイス先生はこう言っている。「Practice and all is coming!」(練習せよ。そうすればすべてがやってくる)。この言葉、すごく痛快というか明快だと思う。理屈をいろいろウジウジ言っていても仕方がない。解剖学だとか人の体の仕組みからいろいろ言っていても仕方がない。そうではなくて、何よりも練習なんだ。実践なんだ。熱心に練習をして、その先に見えてくるものがあるのだ、と。
 もちろんわたしはまだアシュタンガヨガを教室へ行くための準備期間も含めてまだ3週間くらいしかやっていない。だから、5年、10年、さらに20年とかやってきた人の境地というのはもちろん分からなくて、彼らの発する言葉などから察するしかない。でも、何だか変わってきたと思う。それは一緒に暮らしている母も言うことで、アシュタンガヨガの太陽礼拝を始めるようになって、わたしが変わってきたように見えるらしいのだ。自分自身でも何か体が筋肉質になってきてたくましくなってきたのを感じるし、さらにはメンタルも今までよりも打たれ強くなってきたんじゃないか、というような気がしてきている(とはいえまだまだ厚揚げメンタルですけど)。肉体と精神というのはやはり別々のものではなくて、二つで一つなのだと思う。だから肉体が強くなれば精神、メンタルも強くなってくる。言うまでもなく、肉体的に強いアスリートは全然ウジウジしていなくて、精神的にもたくましい。母がわたしに言うには「最近あまりネガティブなことを言わなくなったね」とのこと。そうなのかなぁ。自分ではよく分からないのだけれど、そう言えばあんまりネガティブな不調になっていないな、最近。
 とまぁ、少し脱線いたしましたがそんなこんなでアシュタンガヨガを始めたわたしにとってはチャレンジの連続なのです。が、疲れがたまってきたのでちゃんと夜は早めに寝るようにしてしっかり休息したい。睡眠時間をたっぷりと取るのです。
 頭でっかちなわたしにとってアシュタンガヨガはまさに異文化と言っていい。この異文化の中でしっかりとやっていけるのかどうか楽しみであり、同時に不安でもある。でも、なるようになるさ。だって、わたしの人生、これまで何とかなってきたんだから。これからもきっと何とかなっていく。なるようになっていく。だから、恐れる必要はないし、過剰に心配する必要もない。ただ一日一日を精一杯生きていくのみ。まだ使っていない未来のお皿を洗おうとか考えないで、ただ今使ったお皿をその都度、その都度洗っていく。その日の苦労はその日だけで十分である、と聖書にもある。一歩一歩、アシュタンガヨガも含めて、人生をやっていけたらいいなと思う。
 長くなりました。読了感謝です。



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