【放送大学】『中高年の心理臨床』第8回 こころとからだのエイジング-からだを中心にして-

 1.はじめに

 エイジングとは、体の成熟が終了したあとに起こる生理機能の衰えのことである。エイジングによって、身体機能が衰えてきて環境の変化やストレスに対する適応能力が低下してくると、病気にかかりやすくなったり、病気にかかってから改善しづらくなったりする。多方面にわたり低下してくるのである。
 同じ年齢で同じように成長する発達とは異なり、エイジングは個人差が大きい。エイジングは遺伝的要因に加え、生活習慣や環境要因などが大きく影響する。
 また、身体機能の変化に適応することに失敗すると、うつや不安障害などの精神疾患発症につながってしまうこともある。

 2.メカニズム

 からだのエイジングのメカニズムについては、いくつかの仮説が提唱されている。
 ①活性酸素説:活性酸素によって細胞が損傷されてエイジングが生じるという説。
 ②プログラム説:生物を構成している細胞には分裂できる限界が設定されていて、その限界を迎えた時に老化が生じるという説。
 ③遺伝修復エラー説:細胞分裂の際に少しずつ生じる突然変異が蓄積されて、最終的に破綻を迎えることによって老化が生じるという説。

 3.身体機能のエイジング

 エイジングによって、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感すべてにおいて機能低下が生じる。その中でも特に、視覚と聴覚はコミュニケーションに影響を与えて、機能低下が外出機会の減少へとつながる場合がある。
 骨格筋量と骨格筋力の低下による身体機能の低下はサルコペニアと呼ばれる。サルコペニアは転倒の原因となり、積極的に診断して治療をすべきである。サルコペニアの診断は、歩行速度、握力、筋肉量によって行われる。治療としては、運動とアミノ酸の補給が重要である。
 筋肉だけではなく、骨、関節、靱帯、腱、神経などの運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態はロコモティブシンドロームと呼ばれている。対応としては、運動を日常生活に取り入れることが重要ではあるが、健康状態を十分に把握しながら行うことが必要である。
 高齢になるにつれて自分の歯の本数が少なくなってくる。そうした際には、義歯を装着することが必要である。高齢者の義歯作成については、傷を生じた場合に時間を要するためそのことに注意を払う必要がある。また、義歯の管理が難しいこともあるため支援も行わなければならない場合がある。
 エイジングによって個人差が大きいものの、嚥下機能は低下していく。その際には、誤嚥に伴って起きる肺炎に注意する必要がある。また、嚥下機能に影響する薬剤もあり、適切な薬剤使用が求められる。

 4.生理機能のエイジング

 女性、その中でも経産婦では中年期以降に尿失禁を経験する人の割合が高くなる。一方、男性の場合は、加齢による前立腺肥大によって尿が出にくくなることがある。
 尿失禁には種類があり、その原因ごとによって対処方法が異なってくる。
 また、高齢になると夜間排尿に起きるようになる。
 睡眠についても、途中で目覚めてしまうことが多くなり、睡眠時間自体も短くなる。これは睡眠を誘発する物質であるメラトニンの分泌量が加齢と共に低下してくるためである。
 こうして夜間の睡眠効率が低下するため、日中の眠気が強くなり、昼間の睡眠時間が長くなりがちで、夜間の不眠やせん妄の原因になる場合もある。
 昼寝の制限と日中の活動の確保を行った上でも、つまり、生活習慣を工夫してみてもうまくいかない不眠に対しては薬物療法が行われる。その際には精神疾患であるかどうか判別する必要がある。不眠はうつ病の一症状としてあらわれることも多いからである。睡眠薬は従来はベンゾジアゼピン系が広く用いられてきたが、ふらつきや転倒、認知機能低下といった副作用があるため、最近では新しいタイプの睡眠薬が用いられるようになってきている。
 睡眠障害は多くの疾患と相互に関連する。糖尿病患者の多くに睡眠障害である睡眠時無呼吸症候群が合併するケースが報告されている。また、逆に睡眠障害のある人では肥満や糖尿病の割合が多い。原因としては、不眠によりインスリン感受性ならびに食欲を抑制するホルモンであるレプチンが低下し、食欲を亢進させるグレリンが上昇することなどがある。また、不眠は認知症のリスクファクターとなる。

 5.高齢期における身体疾患の治療

 以前は80歳代になると、身体に負担がかかる侵襲的な治療は控える傾向があった。しかし、近年では医学の進歩もあり、予後を改善したり生活の質(QOL)を向上させるために侵襲的な手術が以前よりも高齢者に行われるようになってきている。高齢者においては個人差が大きいため個別に手術の適否を判断していくことが求められる。

 6.からだのエイジングの心理的影響

 からだのエイジングに伴う老いの自覚は、社会的つながりからの撤退や生きがいの喪失などネガティブな行動、思考につながりやすい。このような認知に対してポジティブ心理学では、自分の強みを再認識し、生きがいを追求することにより、心理的ウェルビーイングの維持・向上をはかるためのプログラムが開発されている。

 7.まとめ

 中高年期の心理的課題は、身体機能の低下と様々な病気にいかに適応しながら生活を再構築していくか、ということである。この課題に対しても個人差は大きい。心理的介入としては、それぞれの生活史を振り返り、新しい課題に適応するために使える経験や強みがないかを共に探り、再適応を援助していくことである。

 <わたしの感想>
 齢を取る。そして、弱っていき、最終的には生涯を終える。この当たり前のことについて考えさせられた。わたしたちは不老不死ではない。みんなある年齢を超えると弱っていくのである。
 もちろん、運動や食事などの生活習慣を整えることによって、生涯現役とばかりに生き抜くこともできないことはない。しかし、多くの人にとっては、エイジングは避けられない現象なのである。成長が終わり老いていく。
 そんな時、どうしたらいいのか。それに対しての具体的なアドバイスが今回の学習内容であった。どうすれば健やかに生き抜くことができるのか、という問いへの模範解答のようなものなのであった。
 世の中の多くの人たちは、まずは病気を治そうと、そして次の段階としては健康になろうと、さらに意識の高い人たちともなればより健康に、つまりは絶好調になろうと努力する。この努力は素晴らしいものであって、かけがえのないものであることはわたしも認める。よりよく生きようと努力することは、人生を輝かせようとする営みで尊いものがある。
 でも、これが(健康になることが)至上命題、究極目標になってしまっている人を時折見かけるが、そこに何か転倒したとまでは行かなくとも違和感のようなものをわたしは覚える。わたしが思うに、健康は手段ではないだろうか。何か健康になること自体を人生の目的にしてしまうことが大変惜しいことのように思えるのである。
 「健康になりたい」。健康を失った人の憧れである。その気持ちそのものを否定するつもりはない。しかし、健康になることが目的なのではなくて、何かやりたいことがあるのではないか。人生が終わるまでの間にやらなければならない、やらなければ死ねないことがあるのではないか。使命と言い換えてもいいかもしれない。
 エイジングについて学んで、わたしはやりたいことがあるということを再認識できた。やらなければならないことがあるのだ。だから、そのために運動もするし、食事も気を付けるし、睡眠もしっかりとる。やりたいことをやるためには健康であることが必要なのである。そのことに気づかされたのだった。わたしにとっては大きな気付きである。もちろん、痛い思いや苦痛を味わいたくないからという消極的な理由ももちろんあることはある。けれど、積極的な理由、人生を謳歌してやりたいことを健康な肉体でやるんだという気持ち。それが一番今のわたしの中では強くなっている。
 健康あってこそ。健康でなければいい仕事はできない。それは精神疾患のわたしにとっては重々痛いほど分かっていることだ。メンタル不調だと本当にこたえる。そして、いい活動や仕事などできるわけがない。フィジカルもこれと一緒でいい仕事やいい活動などの充実した生活を送るためには健康であったほうが断然いいのである。
 わたしは精神疾患でこころの病気の人であるのだが、病気はなる前に予防する方がなってから回復させるよりも易しい。未病の段階でくいとめて改善する方がやさしいのである。わたしのこころの病気にしてもいい方向へと改善できたらと思っているのだが、ありがたいことに身体の方は健康な身である。だから、メンタルを改善するためにもフィジカルをととのえて快調に生活できるよう取り組んでいきたい。
 やりたいことがある。それをやるためには健康であることが必要だ。だから、生活をととのえる。
 方向性が見えたところで、わたしの感想は以上である。絶好調な日がもっと増えたらいいなぁ。


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【放送大学】『中高年の心理臨床』第7回 定年退職にかかわる心理臨床

 1.定年退職にかかわる近年の動向

 2025年には年金支給開始年齢が65歳になる。60歳から65歳へと引き上げられるのだ。
 2012年に高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)が改正された。この法律は、定年の引上げ、引き続き雇うこと、再就職をうながす、仕事につく機会を確保するなどを行うことを旨とした法律で、高年齢者の職業の安定と彼らの福祉の増進をはかり、経済や社会を発展させることに貢献することを目的としている。なお雇用の継続については、就業規則にある解雇事由または退職事由にあてはまらない限り、原則として雇用を継続しなければならないことに今回の改正でなった。

 2.定年退職にまつわる心理社会的課題

 定年退職は人生の大きなライフイベントの一つであることは間違いない。定年退職が持つ意味は個人差が大きい。定年退職で生活様式、経済状況、対人関係などに大きな変化が生じる。定年退職を迎えた人たちは新たな環境に適応する必要があるのである。そのためには前向きに様々な努力を行っていくことが肝要である。
 高齢者を調査した結果(60歳以上の男性高齢者83名)は、現在の生活・活動への関与が積極的であるほど充足度が高いというものであった。
 また、定年退職後に現在の生活や活動への関与を積極的に行うには、老年期以前の心理社会的課題を達成しておくことが重要である。なお、その方法としては、自分史を書くことや、誰かに自分のことを語ることなどが挙げられる。

 3.定年退職にまつわる心理臨床的支援

 定年を控えたおもに50歳代の中高年者向けのキャリアコンサルティング技法があるとのことで、このセクションでは紹介されている。中高年者の①自己理解にとりかかる段階、②自己理解をさらに深め、将来に目を向ける段階、③具体的に将来を考える段階、の各段階に応じて活用することができるワークシートが用意されているのである。

 4.おわりに

 最近では、65歳以降も雇用を継続したり、70歳まで働けるようにしよう、などといった議論が出てきている。この調子で行けばもしかしたら定年がもっと上がっていくかもしれないし、もっと進んで定年という概念そのものがなくなってしまうかもしれない。

 <わたしの感想>
 定年という事柄について考えることができたことはとても良かったと思う。
 わたしは企業で働いた経験がないので、仕事とか定年とか想像することしかできなかったのだが、中高年にとって定年とはビッグイベントだということを了解した。一昔前の日本人の平均寿命が50歳くらいだったことを思うと、栄養状態や公衆衛生の改善、ならびに医学の発達によって今や80、90歳まで生きることができる時代になった。だからこそ、定年退職してからの時間がとても長く、その過ごし方が重要な関心事となってくる。そこでより良く過ごせるかどうかというのが、前向きに物事に取り組むことなのである。高齢者も作家の佐藤優氏の言葉を借りるならフタコブラクダ化していると思う。自戒の意味もこめて、すこやかな老後を送りたいものだとわたしは強く思った。


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